府中市出口川湧水処理場汚泥流出事故の最終報告(令和4年11月25日更新)

更新日:2022年11月25日

令和4年8月23日に出口川湧水処理施設で発生した汚泥流出事故により、近隣住民をはじめ、市民の皆様、また芦田川流域の皆様に多大なご心配をおかけしましたことをあらためてお詫び申し上げます。

すでに安全のお知らせをしておりますが、事故発生時をモデル化した水質検査実験を実施しましたので以下のとおりご報告します。

水質検査とその評価(人及び環境に対する影響)

令和4年8月23日の水質検査により安全を確認し、さらに事故後、河川での魚の死亡などは確認しておりませんが、事故発生時の人・環境への影響及び将来の安全の検証のために、事故発生時をモデル化した水質検査実験を実施しました。

流出した汚泥とは

汚泥は湧水に含まれているカドミウム・銅・亜鉛・アルミニウムの重金属を苛性ソーダ、塩化第二鉄、ならびに高分子凝集剤で100マイクロメートル程度に凝集、沈殿させたものです。

溶出実験

事故発生時の水質検査モデルは、最大限出来る範囲で事故の状況を再現するため、放流口から5メートル地点の汚泥と処理水、河川水の混合比率を施設の処理能力より算出し、さらに出口川の平均的な水流を観察し、そのスピードで混合水を撹拌(かくはん)しました。撹拌後、事故発生から汚泥回収完了までの30時間の間の特定の感覚で水質を検査しました。

実験結果により、事故発生時から汚泥回収までの30時間、河川水内において時間経過による汚泥からの重金属成分の溶出はないと考えられます。また、放流口から5メートル地点の水質は、重金属濃度が時間経過に伴って継続的に減少し、水質的に24時間で環境基準および一般排水基準の1/10以下になっており問題ないと考えらます。

上記の試験は放流口での希釈モデルであり、下流に行くにしたがってさらに希釈され濃度は低減すると想定されるため、この実験結果を用いて、出口川のいくつかの地点における、汚泥到達時と時間経過に伴う水質状況を数学的に計算しました。放流口からそれぞれ5メートル、汚泥の発見された最下流の570メートル地点、および、1380メートル地点で算出したところ、汚泥到達時には一部環境基準を超えている部分もございますが、いずれも汚泥到達後、30分後には環境基準を満たすレベルになりました。1380メートル地点においては、汚泥到達時点ですでに環境基準を満足する水質レベルであることを確認しました。

以上の実験検証より、事故発生時を含めて汚泥回収を完了するまでの間、人及び環境への影響はなく、また下流の市町に対する影響もないと考えています。

事故の原因と対策

事故の原因

凝集沈殿槽の界面計の故障により、本来、自動での汚泥の引き抜き処理ができなかったため、手動での汚泥引き抜きを行っておりました。今回の事故は、この引き抜き作業中に他の作業に従事していたことで、汚泥移送ポンプの停止を失念したものです。

対策

作業品質の向上

場内の状況がリアルタイムで監視できるカメラの増設や、委託事業者の本社から湧水処理の状況を複数で監視できる仕組みを構築します。さらに、作業員や市職員の知識向上のために、類似施設で発生した事故やニアミスを参考にした定期的なケース・スタディを実施することにより、異常事態を未然に防ぐ、また、異常が発生した際に迅速な対応が可能なように継続的な要員育成を行います。このほかにも、常に最悪の事態を想定しながら、緊張感をもって業務に従事すること、日ごろからの点検・報告、研修などについて、市役所、受託事業者共に共有化、見える化を徹底します。

リスクマネジメントの改善

異常時の市と委託業者の責任分担、ならびに連絡体制の見直しを行いました。さらに、問題発生時の内部の対応チームの迅速な立ち上げと、特に初動時の情報共有の強化を行います。地元の住民の方々をはじめ、府中市民のみなさまには、事故発生を察知した段階で注意喚起の呼びかけを実施し、その後も詳細が判明次第続報を発出し、適切な情報発信ができるよう最善の努力に努めてまいります。これらを柱にした危機管理マニュアルを整備し、事故発生時に避けなければならない二次災害や防止や、事故の局所化対応、速やかな復旧ができるよう組織としての対応能力の向上を図ります。

上記2点を踏まえた再発防止に向けた具体策(例)

ソフト対策

【契約書、仕様書の改善】

目的:市・委託先事業者の役割の明確化
従来:仕様書に具体的な保守整備の内容が記載なく、日々の巡回に伴う故障、異常への対応のみとなっており、結果市は事業者任せになっていました。
改善:総括責任者の役割、教育研修の実施を記載するとともに、市と委託先事業者の業務区分を明確化することで、双方緊張感をもって業務にあたります。

 

【危機対応マニュアル】

目的:迅速で的確な初動体制の実行と事故発生時の通報体制の確立
従来:不徹底でした。
改善:事故想定に基づくフェーズをあらかじめ定めたうえで、各フ ェーズでの初動体制と情報発信について整理を行います。

ハード対策

【汚泥貯留槽満水防止対策】

目的:汚泥貯槽異常時における場内流出防止
改善:アルカリ汚泥貯槽の異常上昇時、調整槽に自動で移送することで場内外に汚泥があふれることを防止します。
 

【処理水等緊急遮断対策】

目的:処理水異常時における河川への処理水放流遮断
改善:PH計と連動し、PHの排水基準値を超えない時点で放流水を自動遮断します。他の異常時では手動操作でも緊急遮断を実施します。
 

【カメラを使用した監視体制】

目的:カメラによるリアルタイム監視の実施(現場点検で補えない部分)
改善:薬品注入状況や凝集沈殿状況を監視室で確認することで、処理不良状況時に早期発見・対応に繋げます。

養鯉池での魚のへい死への対応

市は当該養鯉池での魚の斃死(へいし)は現認しておりませんが、養鯉池の管理者から流出事故後に魚が斃死した旨報告がありました。

一連の現地調査において出口川から養鯉池への引き込み水路では汚泥は発見できなかったこととこのたびの実験結果から今回の事件と養鯉池での魚の斃死の因果関係は立証できませんでした。

一方で、汚泥は湧水処理施設から570メートル下流まで流れており、この範囲にある(湧水処理施設から500メートル下流)養鯉池に物質が流れ込んだ可能性もないとは言えません。また、一般的に養殖魚は自然環境に生息する魚より環境変化に敏感であることも考慮するべきであると考えております。市としては、魚の斃死及び養鯉池の事業継続に関して何らかの対応をすべきであると考えます。

この記事に関するお問い合わせ先

広島県府中市 建設部 環境整備課
環境対策係
〒726-0002 広島県府中市鵜飼町74番地2
電話  :0847-43-7237(窓口業務時間
ファクス:0847-43-9223

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